マッチングアプリを使っていると、「プロフィールを添削します」「必ず結果を出させます」と声をかけてくる人がいます。SNSで知り合った人から、婚活のプロを紹介されることもあります。
その中には、数十万円の契約を勧めてくるものもあります。
この記事では、そうした契約でクーリング・オフが使えるのはどんな場合かを、消費者庁の「特定商取引法ガイド」の記載をもとに整理します。
先に、いちばん大事なことを書きます。
「恋愛コンサルだから対象外」とは限りません。 サービスの種類だけでなく、どう勧誘されて、どこで契約したかでも結論が変わります。自分で対象外だと判断して相談をやめてしまうのが、いちばんもったいないところです。
「コンサル」そのものは違法ではありません
まず前提です。有料で助言を売ること自体は、何も問題ありません。写真の撮り方やプロフィールの書き方を教わって、結果が出た人もいるはずです。
問題になるのは、契約の中身と、契約させ方のほうです。
- 書面をもらっていない
- 返金の条件が書かれていない
- その場で決めるよう迫られた
- 断ろうとしたら態度が変わった
こうした要素が入ってきたとき、はじめてトラブルになります。
判断する軸は2つあります
特定商取引法を見るとき、確認する軸は2つです。混同されがちですが、別の話です。

軸A:サービスの種類は何か
「特定継続的役務提供」というルールがあり、書面の交付義務や中途解約の上限が定められています。ただし対象は7つの役務に限定されています。
軸B:どう勧誘され、どこで契約したか
訪問販売・電話勧誘販売などに当たるかどうか。こちらは原則としてすべての商品・役務が対象です。
消費者庁のガイドにも、こう明記されています。
「特定商取引法における訪問販売、通信販売、電話勧誘販売に関する規定は、原則全ての商品・役務と特定権利について対象になります」
つまり、軸Aで外れても、軸Bで引っかかることがある。ここを見落とすと、使えるはずの権利を自分で手放すことになります。
軸A:サービスの種類で見る
特定継続的役務提供の対象は、次の7つです。
- エステティック
- 美容医療
- 語学教室
- 家庭教師
- 学習塾
- パソコン教室
- 結婚相手紹介サービス
「恋愛コンサル」「婚活コンサル」は、この7つに入っていません。
結婚相手紹介サービスなら対象
7つの中にある「結婚相手紹介サービス」は、消費者庁の定義では「結婚を希望する者への異性の紹介」です。
対象になる条件は2つあります。
- 期間が2ヶ月を超えるもの
- 金額が5万円を超えるもの(入学金・受講料・教材費・関連商品の販売などを含めた契約金の総額)
サービスがインターネットや電話で提供される場合も含まれると明記されているので、オンライン完結型でも対象になり得ます。
つまり、異性を紹介するかどうかが分かれ目です。相手がどう名乗っているかではなく、契約の実態で判断されます。
対象になる場合に使える権利
事業者は契約前に「概要書面」、契約後に遅滞なく「契約書面」を渡す義務があります。
書面には決まりがあります。書面をよく読むべきことを赤枠の中に赤字で記載しなければならず、契約書面のクーリング・オフの事項も赤枠の中に赤字で書くことが定められています。文字は8ポイント以上です。
渡された紙に赤い枠がひとつもなければ、その時点で義務を果たしていないということになります。これは目で見て分かるので、確認しやすい点です。
クーリング・オフは、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内。契約した日からではありません。
8日を過ぎても、将来に向かって中途解約ができます。その際に事業者が請求できる額には上限があります。
- サービス開始前に解除:3万円まで
- サービス開始後に解除:提供済み分の対価+(2万円か、契約残額の20%のうち低いほう)
「契約残額」とは、役務の対価の総額から、すでに提供された役務の対価に相当する額を差し引いた額です。
たとえば3ヶ月38万円の契約で、1ヶ月受けた時点で解約する場合。提供済み分を約12.7万円とすると、契約残額は約25.3万円。その20%は約5.1万円なので、2万円のほうが低くなります。つまり請求され得るのは、提供済み分の約12.7万円+2万円=約14.7万円という計算になります。
細かい計算は契約内容によって変わるので、実際の金額は消費生活センターで確認してください。上限を超えて受け取っている分は返還しなければならない、と定められています。
なお、関連商品として政令が指定しているものもあります。結婚相手紹介サービスの場合は真珠・貴石・半貴石、指輪その他の装身具です。本体の契約をクーリング・オフや中途解約すれば、これらの販売契約も解除できます。
軸B:勧誘方法と契約場所で見る
ここが、前半だけ読んで諦めてほしくないところです。
訪問販売は「自宅に来る」だけではありません
消費者庁のガイドでは、訪問販売にキャッチセールスとアポイントメントセールスが含まれると明記されています。
そして、こう書かれています。
「喫茶店や路上での販売、またホテルや公民館を一時的に借りるなどして行われる展示販売のうち、期間、施設等からみて、店舗に類似するものとは認められないものも訪問販売に該当します」
カフェで契約した場合も、訪問販売に当たり得るということです。
SNSで呼び出された場合も
アポイントメントセールスの説明は、こうです。
「電話や郵便、SNS等で販売目的を明示せずに消費者を呼び出したり、『あなたは特別に選ばれました』等、他の者に比べて著しく有利な条件で契約できると消費者を誘って営業所等に呼び出したりして契約を締結させる場合」
マッチングアプリやSNSで知り合い、販売目的を告げられないまま会うことになり、その場で契約を勧められた。この形は、アポイントメントセールスに当たる可能性があります。
訪問販売に当たれば、役務の種類を問わずクーリング・オフ8日
訪問販売のクーリング・オフも、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内です。書面または電磁的記録で行います。
つまり、恋愛コンサルであっても、勧誘のされ方によってはクーリング・オフが使える可能性があるということです。
「7つの役務に入っていないから無理だ」と自分で結論を出さないでください。
ただし、自分でWebから申し込んだ場合は別
一方、広告を見て自分でWebフォームから申し込んだ場合は通信販売に当たり、クーリング・オフの制度はありません。返品や解約の条件は、事業者が定めた特約によります。
だからこそ、申し込む前に条件を読む必要があります。
8日を過ぎていても、諦めないでください
これは軸A・軸Bのどちらにも共通するルールです。
事業者がクーリング・オフに関する事項について事実と違うことを告げたり、威迫したりして、消費者が誤認・困惑してクーリング・オフをしなかった場合は、8日を過ぎていてもクーリング・オフができると定められています。
「この契約にクーリング・オフはありません」と言われて諦めた。強く引き止められて言い出せなかった。こうした経緯があるなら、期間が過ぎていても相談する価値があります。
ただし、適用されるかどうかは個別の判断になります。気づいた時点ですぐに消費生活センターへ。待っている間に状況が良くなることはありません。
クーリング・オフの出し方

8日しかない権利なので、出し方も書いておきます。消費者庁のガイドでは、次のように案内されています。
書面で出す場合
特定記録郵便、書留、内容証明郵便などで行うことが薦められています。出した証拠が残る方法を選ぶ、ということです。
電磁的記録で出す場合
メールなら送信したメールを保存しておく。事業者のクーリング・オフ専用フォームなら、画面のスクリーンショットを残しておく。
いずれも、出したという証拠を自分の手元に残すことが要点です。
クーリング・オフをすれば、すでにサービスを受けていても対価を支払う必要はなく、損害賠償や違約金も不要です。支払い済みのお金は返ってきます。
まだ払っていないなら、いまが相談どきです
契約前の人にこそ伝えたいことがあります。
消費生活センターは、契約してしまった人だけのものではありません。 迷っている段階で相談するほうが、打てる手は多くなります。
相談は無料です。相談したことが相手の事業者に伝わるわけでもありません。
何を言えばいいか分からない場合は、こんな言い方で大丈夫です。
> 「マッチングアプリで知り合った人から婚活のサポートを紹介され、3ヶ月で38万円の契約を勧められています。まだ契約していませんが、相談したいです」
これだけで十分に伝わります。
消費者ホットラインは 188(いやや)。身近な消費生活センターにつながります。
契約前に確認すること

迷ったら、次の点を見てください。ひとつでも引っかかるなら、その場で決めないことです。
- 書面をもらえるか。口頭とチャットだけで進んでいないか
- 返金の条件が、書面に具体的に書かれているか
- 期間と回数が明記されているか
- 「今日だけ」「今決めれば割引」と、その場で決めさせようとしていないか
- 分割払いやカードローン、消費者金融を勧められていないか
- 「必ず結果が出る」と言っていないか
前払いで5万円超なら、財務書類を見せてもらえます
これはあまり知られていない権利です。
特定継続的役務提供のルールでは、前払方式で5万円を超える契約を扱う事業者に対し、業務や財産の状況を記載した書類(貸借対照表、損益計算書など)を用意し、消費者の求めに応じて閲覧できるようにしておくことが義務づけられています。
結婚相手紹介サービスに当たる契約で前払いを求められたなら、「財務の書類を見せてください」と言えます。その反応だけでも、相当な判断材料になります。
「必ず結果が出る」という言い方について
特定商取引法では、取引の形態ごとに、誇大広告や著しく事実と相違する表示を禁止する規定が置かれています。訪問販売なら訪問販売の章、特定継続的役務提供ならその章、という形です。
どの形態に当たるかで条文は変わりますが、結果を保証する言い方そのものが、慎重に見るべきサインであることは変わりません。
その場で決めさせようとする相手への断り方
高額な契約を迫られたとき、断りにくくさせる言い方は決まっています。
「ここで決められない人は、婚活でも決められない」 「自分に投資できない人は変われない」
こうした言い方をされると、断ること自体が自分の弱さのように感じられます。そこがねらいです。
対処はひとつです。その場で答えない。
- 「持ち帰って検討します」
- 「書面をもらえますか。読んでから返事します」
- 「家族に相談してから決めます」
これで態度が変わるなら、それが答えです。まともな事業者は、書面を渡して待ちます。
書面が出てこない場合も答えははっきりしています。対象になる契約なら交付義務違反ですし、対象外なら比較検討する材料がないということです。どちらにしても、契約しない理由になります。
なお特定商取引法では、契約させるため、あるいは解除を妨げるために相手を威迫して困惑させる行為を禁止する規定が、取引形態ごとに置かれています。強く引き止められた経験そのものが、相談するときの材料になります。
契約してしまった後にできること

1. 書面を受け取った日付を確認する(クーリング・オフの起算日になります) 2. 契約書・申込書・領収書・振込の記録を保管する 3. 勧誘時のやりとり(チャット、メール、SNSのDM)をスクリーンショットで残す 4. どこで契約したか、どう誘われたかを思い出して書き出す(軸Bの判断材料になります) 5. 消費者ホットライン188に相談する
カード決済をしている場合は、カード会社に状況を伝えることも検討してください。
「自分が契約してしまったのが悪い」と思って相談をためらう人がいますが、相談するかどうかを決めるのに、自分で結論を出す必要はありません。判断するのは相談を受ける側です。
そのほかの相談先
- 警察相談専用電話:#9110(緊急ではない相談)
- 法的手続きを考える段階なら、法テラスで相談先を案内してもらえます
数十万円を払う前に、できることがあります
ここからは、契約の話ではなく、アプリの使い方の話です。
コンサルを検討している人の多くは、いいねが来ない、マッチングしても続かないという状態にいます。
もしまだ無料で打てる手が残っているなら、先にそちらを試す価値はあります。いいねが返ってこない理由と見直す順番はいいねがこない理由と今すぐ試せる対策に、写真の選び方はプロフィール写真の撮り方・選び方にまとめています。どちらも無料で読めます。
使っているアプリ自体が合っていない可能性もあります。アプリごとの違いは30代におすすめのマッチングアプリ比較にまとめました。
たとえばPairsは、女性は無料で使えて、男性も月額制です。趣味や価値観のコミュニティから相手を探せるので、条件で絞る使い方に行き詰まった人には別の入り口になります。
数十万円の契約を検討する前に、月額数千円で3ヶ月試してみる。順番としては、こちらが先だと思います。
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まとめ
恋愛コンサルや婚活コンサルの高額契約でもめたとき、見る軸は2つです。
軸A:サービスの種類。 特定継続的役務提供の対象は7つで、結婚相手紹介サービス(異性の紹介・2ヶ月超・5万円超)は入りますが、助言だけを売る恋愛コンサルは入りません。対象なら書面の交付義務があり、中途解約時に事業者が請求できる額にも上限があります。
軸B:勧誘方法と契約場所。 訪問販売などの規定は原則すべての役務が対象です。カフェでの契約や、SNSで販売目的を告げられずに呼び出された場合(アポイントメントセールス)は訪問販売に当たり得ます。
つまり、恋愛コンサルでもクーリング・オフが使える場合があります。 「7つに入っていないから無理」と自分で結論を出さないでください。
クーリング・オフはどちらも書面を受け取った日から8日以内。契約日からではありません。出すときは内容証明などで証拠を残します。
そして、嘘や威迫でクーリング・オフできなかった場合は、8日を過ぎても使えると定められています。
まだ払っていない人も、もう払ってしまった人も、相談先は同じです。消費者ホットライン188。相談は無料で、判断するのは相談を受ける側です。
📌 この記事のポイント
✅ 判断の軸は2つ。サービスの種類(軸A)と、勧誘方法・契約場所(軸B)
✅ 特定継続的役務提供の対象は7つ。結婚相手紹介サービスは入るが、助言だけの恋愛コンサルは入らない
✅ 訪問販売などの規定は原則すべての役務が対象。カフェでの契約やSNSでの呼び出し(アポイントメントセールス)も該当し得る
✅ クーリング・オフは書面を受け取った日から8日以内。契約日からではない。出すときは内容証明など証拠が残る方法で
✅ 嘘や威迫で誤認・困惑してクーリング・オフしなかった場合は、8日を過ぎても可能
✅ 前払いで5万円超の特定継続的役務なら、財務書類の閲覧を求められる
✅ 契約前でも消費生活センターに相談できる。むしろ払う前のほうが打てる手は多い。消費者ホットライン188

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