やりとりが盛り上がって、会う話になります。
場所を提案しようとしたら、先に返ってきます。「いいお店知ってるから、そこにしましょう」
多くの場合はただの気遣いです。ただ、この形から始まるトラブルを、アプリの運営と警察がそれぞれ名指しで注意喚起しています。しかも最近、これまでの「店を調べてから行く」という対策が通じないケースが報じられました。
この記事では、両方が公開している警戒サインを並べたうえで、角を立てずに断る言い方と、その場でおかしいと思ったときの動き方まで書きます。
公式が挙げている4つのサイン

Pairsが「悪質なユーザーを見分ける手がかり」というページで、「ぼったくり店への勧誘」として4つ挙げています。
- 男性からの待ち合わせ場所の提案に応じず、特定の場所を指定してくる
- 当日や翌日など、すぐに飲みにいく約束を取り付ける
- 事前にお店を決めようとしない
- 予定が決まるとすぐにLINE等に移行する
※原文が男性向けに書かれていますが、構造そのものは性別を問いません。女性側のリスクについては後述します。
3つめに注目してください。1つめと矛盾しているように見えますが、そうではありません。「このへんで」とエリアだけ決めて、具体的な店名は当日まで出さないという形です。
事前に店名が分かれば、検索して調べられます。それをさせないために、当日まで伏せます。順番に意味があります。
警察も同じ型を公開しています
警視庁の「盛り場トピックス」というページ(2023年12月更新)に、「出会い系サイトで誘いぼったくり」という項目があります。
「出会い系サイト等で知り合った女性と実際に会うことになり、『私の知っている店に行きましょう。』と言われたらご注意。ついていった先はぼったくりの店の場合もあるのです。もちろんこの場合、女性は店の関係者。いつの間にか女性はいなくなり、気づいたときには店員の高額請求が始まります」
同じページの池袋地区の項には、さらに具体的に書かれています。
「出会い系アプリで知り合った女性から『一緒に飲みましょう。』などと誘われ、女性の案内する飲食店について行くと、不当な方法で高額な料金を請求される事案が発生していますので、ご注意ください」
アプリの運営と警察が、別々に同じ型を注意喚起しているということです。
相手が途中でいなくなる、という部分
ここは覚えておいてください。請求が始まるのは、相手が席を外したあとです。二人きりで話しているうちは何も起きません。 だから当日その場では「いい人そうだった」としか思えません。
店を調べる対策が通じないケース
ここが、この記事でいちばん新しい部分です。
2026年10月、産経新聞が報じた事件があります。警視庁目白署が、恐喝の疑いで男女4人を逮捕しました。
逮捕容疑の内容によると、2026年6月の深夜、豊島区のある場所で20代男性に酒を提供し、飲食代の名目で高額な現金を請求。「消費者金融から借りてでも払え」などと言い、現金14万2000円を脅し取ったとされています。女性がマッチングアプリで男性と知り合い、現場へ誘導して多量の酒を飲ませたとみられる、と報じられています。
そして報道によれば、その場所はレンタルスペースで、バーを営業しているかのように装っていたとされています。
これが何を意味するか
定番の対策は「店名を聞いて、口コミや評価を調べてから行く」でした。レンタルスペースが使われた場合、この手が効きません。
- 店名で検索しても出てこない
- 口コミもレビューも存在しない
- 地図にも載っていない
- 看板が出ていても、その日だけのもの
調べて出てこない店は、安全なのではなく、調べられない店です。 個人経営の隠れ家的な店と区別がつかないのが、この型のやっかいなところです。
同署は同種の手口による余罪が複数あるとみて捜査を進めているとのことで、単発の事例ではないとみられています。実店舗型のぼったくりには店名を調べる対策が有効なので、「調べる」をやめるのではなく、調べて出てこなかったときの判断を決めておくのが実務的です。
女性が警戒すべきなのは、金額より場所です
ここまでの材料は、運営の原文も警視庁の記述も報じられた事件も、すべて男性が被害者の型でした。女性読者には、別の読み方が要ります。
金銭被害より先に来るのは、密室のリスクです。
店名で検索して出てこない場所というのは、言い換えると第三者の目がない場所です。他の客がいるか、店員が複数いるか、通報される心配を相手がしているか。これらが外から判断できません。
初回の待ち合わせで、相手が指定してきた場所が検索して出てこない。この時点で、行かない理由としては十分です。
警視庁の同じページには、ホストクラブの「売掛」(ツケ払い・後払い)についても注意喚起があり、「気を付けないとあっという間に数百万円に」「予期せず犯罪行為に手を染めてしまったり、犯罪被害に遭う可能性も」と書かれています。金銭トラブルの型は、性別で入り口が変わるだけで存在します。
初デートの場所・時間の決め方はマッチングアプリの初デート、女性が気をつけることにまとめています。
当日までに決めておくこと

防ぎ方は、当日の判断ではなく事前の段取りです。
1. 店は自分から2つ出す
相手に決めさせないのがいちばん確実です。候補を2つ出せば、押しつけにもなりません。
「◯◯駅のあたりだと、△△か□□あたりはどうですか」
チェーン店や、駅から見える場所の店を選んでください。地下、雑居ビルの上階、看板のない入口は、初回では避けたほうが無難です。
2. 相手が譲らないなら、そこが判断材料
「すみません、初めて行くところだと緊張するので、今回はこちらでもいいですか」
初対面の相手に自分の希望を通そうとする時点で、その先も同じです。
3. 1軒目はお酒を前提にしない
報じられた事件も警視庁の注意喚起も、酒を飲ませるという点が共通しています。判断力が落ちた状態を作るのが、この型の前提です。
1軒目はカフェか食事にして、短い時間で区切ってください。これだけで入り口から外れます。
4. カードを手渡さない
警視庁は、錦糸町・新橋・上野湯島といった地区で、飲食店でのクレジットカードの不正請求事案が多発していると公表しています。ただしこれは客引きについて行った先での被害として説明されているもので、アプリ経由の事案として書かれているわけではありません。
それでも、支払い手段を相手に預けないという原則は同じです。決済は自分の目の前でやってもらってください。
その場でおかしいと思ったら
入ってしまってからの話です。
メニューに値段がない、注文していないものが出てくる、相手が長く席を外す。 このどれかが起きたら、長居しないでください。
「すみません、明日早いので今日はこのへんで」
金額を言われてから帰ろうとすると、揉めます。 違和感の段階で切り上げるほうが、はるかに簡単です。
高額を請求されたら
その場で払う義務があるかどうかは状況によって変わります。自分で判断せず、警察に連絡してください。
報じられた事件でも「消費者金融から借りてでも払え」と言われたとされています。金を借りに行かせようとするのは、その場で払えない金額だと相手も分かっている、ということでもあります。
- 危険を感じるとき:110番
- 緊急ではないが相談したいとき:警察相談専用電話 #9110
- 支払い後のトラブル:消費者ホットライン 188
- カードで払ってしまったとき:カード会社に連絡(利用停止と不正利用の相談)
その場で電話できなかった場合
言い出せる雰囲気ではないこともあります。解放されたあとでいいので、記録を残してください。
- 店名・場所・入った時刻と出た時刻
- 料金表示があったかどうか(撮れるなら撮る)
- 言われた言葉(とくに支払いを迫る文言)
- 相手のニックネームとやりとりのスクリーンショット
条例の話も少しだけ
東京都には通称「ぼったくり防止条例」と呼ばれる条例があります。料金や違約金を営業所内に客が見やすいように表示する義務、そして粗野・乱暴な言動や、預かった所持品を隠すような方法で料金を取り立ててはならないという規定があります。値段が出ていない、強い口調で迫られる、荷物を返してもらえない。これらは条例が規制している行為そのものです。
ただし、対象は公安委員会が指定した区域内の、接待をして酒類を提供する営業などに限られます。 すべての飲食店が対象ではありません。報じられた事件の容疑も、条例ではなく刑法の恐喝です。条例があるから守られる、と期待しすぎないでください。
アプリ側にも報告してください
警察とは別に、運営にも報告しておいてください。
Pairsの違反報告は、相手のプロフィールまたはメッセージ画面の右上から行えます。報告したことも、報告の内容も、相手には伝わりませんと公式ヘルプに明記されています。相手がすでに退会していても報告できます。
先ほどの「悪質なユーザーを見分ける手がかり」ページの末尾にも、「お相手のブロックや違反報告、Pairsカスタマーサポートへの相談をご検討ください」「万が一犯罪に巻き込まれそうになったら、警察に相談しましょう」と書かれています。
順番はブロックより通報が先です。 ブロックすると過去のやりとりが見えなくなり、報告に必要な履歴を出せなくなることがあります。
勧誘の型そのものはマッチングアプリで「教えてあげる」と近づく人、処分された相手の表示についてはペアーズの「強制退会済み」とはに整理しています。
それでも、ほとんどの人は普通の相手です
ここまで読むと怖くなると思うので、最後に。
店を提案してくること自体は、ごく普通の気遣いです。問題は「指定してくること」ではなく、4つのサインが重なることです。
そして、この型はこちらが店を2つ出すだけで、ほとんど成立しなくなります。 相手がただの気遣いだったなら、別の店でも問題なく会えます。
アプリを選ぶときに見ておきたいのは、運営が何を危険として公開しているかです。Pairsは具体的な4項目まで出したうえで、違反報告の窓口を用意し、報告内容が相手に伝わらないことまで明記しています。要注意人物の見分け方は危険人物チェックリスト15項目にまとめました。
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まとめ
店を指定してくること自体は普通です。警戒するのは、4つのサインが重なったときだけで十分です。
いちばん確実な防ぎ方は、こちらから店を2つ出すこと。そして、おかしいと思ったら金額を言われる前に切り上げてください。請求されてからでは揉めます。
📌 この記事のポイント
✅ Pairs公式が挙げる4サイン:待ち合わせ場所の提案に応じず特定の場所を指定/当日や翌日にすぐ飲みに行きたがる/事前に店を決めようとしない/決まるとすぐLINEに移行する
✅ 「場所を指定する」と「事前に店を決めない」は矛盾しない。エリアだけ決めて店名は当日まで伏せる、という順番
✅ 警視庁も同じ型を公開。池袋地区の項には「出会い系アプリで知り合った女性から誘われ、案内された飲食店で高額請求される事案」と明記されている
✅ 請求が始まるのは相手が席を外したあと。二人で話しているうちは何も起きない
✅ 2026年6月の事件で10月に4人が逮捕(恐喝容疑)。現場はレンタルスペースでバーを装っていたとされ、店名で調べる対策が通じないケースが出てきた
✅ 調べて出てこない店は、安全なのではなく調べられない店。女性にとっては金額より密室であることが先に来る
✅ 防ぎ方は段取り。店は自分から2つ出す/1軒目は酒を前提にしない/カードは手渡さない
✅ 高額請求されたら自分で判断せず110番。電話できなかったら、店名・時刻・料金表示の有無・言われた言葉を記録する
✅ 東京都の通称ぼったくり防止条例には料金表示義務と取立て行為の規制があるが、対象は指定区域内の接待を伴う営業などに限られる
※事件の内容は産経新聞の報道(2026年10月23日配信)にもとづきます。被疑者は逮捕段階であり、有罪が確定したものではありません。注意喚起の記述は警視庁「盛り場トピックス(最近の盛り場の被害事例)」(2023年12月13日更新)およびPairs公式「悪質なユーザーを見分ける手がかり」、条例は「性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等及び性関連禁止営業への場所の提供の規制に関する条例」第3条・第4条、アプリの仕様はPairs公式ヘルプセンターにもとづき、2026年11月2日に確認した内容です。この記事は制度や手口の概要を紹介するもので、個別の事案について法的助言をするものではありません。

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