やりとりを始めてすぐ、相手がこちらの相談役のようになっていく。
「それはもったいないよ」「もっといい方法があるんだけど」「自分も昔は同じだった」。
気づけば、こちらが教わる側で、相手が教える側になっている。
この形は、そのまま親切な人である場合もありますし、途中で勧誘に変わる場合もあります。やっかいなのは、入り方が同じなので最初の時点では区別がつかないことです。
この記事では、どこで切り替わるのかという合図を整理します。運営が警戒サインとして名指ししている項目と、警察庁の統計を使って、感覚ではなく具体的な形で書きます。
「教える側」に回ろうとする人がいる
まず、この型の特徴をはっきりさせます。
普通のやりとりでは、お互いが自分のことを話します。相手の話を聞いて、こちらも話す。行き来があります。
この型では、役割が固定されます。相手が助言する人、こちらが助言を受ける人。相手の失敗談も出てきますが、「自分も昔はそうだった、でも今は違う」という形で出てきます。つまり、相手が先に進んでいて、こちらが遅れているという構図が作られます。
この構図が、あとで効いてきます。役割が固まると、断りにくくなります。性格の問題ではなく、関係の形の問題です。
だからこそ、形が決まる前に気づけるかどうかが分かれ目になります。
もし読んでいて「もう固まってしまっている」と思ったとしても、抜けられなくなるわけではありません。その場合の言い方は後半に書きます。
公式が名指ししている合図

ここは推測ではなく、一次情報があります。
Pairsは「悪質なユーザーを見分ける手がかり」というページで、警戒すべき特徴を項目別に公開しています。そのなかの「マルチ商法・スカウト」に、こう書かれています。
「マッチングしたばかりの段階で、将来の夢や不労所得の話題、尊敬している先輩や師匠について話し始める」
「師匠」「先輩」「不労所得」「将来の夢」。この4つが、運営側から名指しで挙げられています。
同じページには、こうした項目も並んでいます。
- マルチ商法や情報商材などの勧誘、その他営業・宣伝をおこなう
- カットモデルの募集をしたり、モデルや芸能界へのスカウトをほのめかす
- 仮想通貨などの暗号資産への投資を勧めてくる
- 本名・住所・勤務先・銀行口座の情報など詳細な個人情報を聞いてくる
ここに載っているかどうかは、自分の違和感が気のせいかどうかの基準になります。
自分の感覚を疑って黙ってしまう必要はありません。ここに書かれた形が出てきたら、運営自身が警戒してくださいと言っている状態です。チェックリスト形式で網羅的に知りたい場合はマッチングアプリの要注意人物を見抜く!危険人物チェックリスト15項目にまとめています。
どこで切り替わるか

最初から「投資をしませんか」と言ってくる相手は、まず警戒されて終わります。だから、そうは来ません。
こちらの仕事や悩みを熱心に聞いてくれて、具体的な助言をくれる。その助言が実際に役に立つこともあります。
見るのは、そのあとです。
切り替わりの合図
話題が、こちらのことから相手の世界のことに移っていきます。
- 「もったいない」と言われる回数が増える
- 相手の成功体験の比重が増えていく
- 自分の先生・師匠・先輩の話が出てくる
- 「その人に会わせたい」「紹介したい」と言われる
- 会う場所が、相手の指定に変わる
- 二人で会うはずが、他の人も来ると言われる
- セミナー、勉強会、教材、コミュニティという言葉が出る
- 金額の話が出る
いちばん強い合図は、第三者が登場することです。
恋愛目的で会う相手が、初対面の段階で別の人物に会わせたがる理由は、あまりありません。「師匠に会わせたい」「仲間に紹介したい」が出た時点で、目的は二人の関係の外にあります。
数字で見ると、入口はマッチングアプリが最多
規模感を一次情報で確認しておきます。
警察庁が公表した令和7年(2025年)の確定値では、SNS型ロマンス詐欺の認知件数は5,645件、被害総額は546.4億円でした。前年の3,824件・400.9億円から増えています。既遂1件あたりの被害額は969.6万円。これは前年の1,048.5万円から下がっています。件数と総額は増えていますが、1件あたりは減っているということです。
当初の接触ツールの内訳は、マッチングアプリが1,846件(32.7%)で最多。次いでInstagram 1,288件(22.8%)、Facebook 1,049件(18.6%)で、この3つで全体の約7割を占めています。
先に、正直に書いておきます
この統計は「SNS型ロマンス詐欺」、つまり恋愛感情を使って金銭をだまし取る詐欺の件数です。この記事で書いている「教える側として近づく型」のすべてが詐欺というわけではありません。 親切な人も、本当にいます。
また被害の年代は、40代から60代で全体の75.6%を占めています。30代は男性430件・女性226件の合計656件で、全体の11.6%。割合としては30代が中心ではありません。
ただし30代の656件は、前年の467件から1.4倍に増えています。そして入口がマッチングアプリであることは、年代に関係なく当てはまります。
被疑者が名乗った職業
詐称した職業の内訳は、投資家が627件で最多。次いで会社員507件、会社役員378件でした。
ただし627件は全体の11.1%です。最多ではあっても、多数派ではありません。2位の会社員(9.0%)も3位の会社役員(6.7%)も、「教える立場」の肩書きではありません。「投資家が1位だから、教えてくる人が危ない」とまでは言えません。
言えるのは、「教えてくれる人」を名乗る入り方が、少なくとも詐欺の側では定番として使われているということまでです。
そして、もうひとつ断っておきます。
この記事で扱っている勧誘そのもの、つまりセミナーや教材に誘われた件数を測った公的な統計は、見つかりませんでした。犯罪として立件されたものは数えられますが、「断れずに契約してしまった」は、数字として残りません。 身近に起きていないという意味ではなく、測られていないということです。
最後に、行動に直結する数字を。被害時の連絡ツールは、LINEが5,294件で93.8%。当初の接触手段はダイレクトメッセージが92.8%です。つまりアプリで出会い、LINEに移ってから被害が起きているという流れが、数字に出ています。
LINEへの移行自体はごく普通のことなので、それだけで判断はできません。意味があるのは順番のほうです。まだほとんど話していないのに先に連絡先を移したがる、アプリ内では込み入った話をせず移ってから本題が始まる。この順番のときは、運営の目が届かない場所で話したい理由がある、という可能性が出てきます。
手口そのものの種類はマッチングアプリ詐欺の手口と見分け方に整理しています。
なぜ断りにくくなるのか
ここは、自分を責めないために読んでください。
「おかしいと思ったのに断れなかった」という話は珍しくありません。判断力の問題ではなく、断りにくい形が先に作られているからです。
理由は4つに分けられます。
- 先に与えられている:助言や時間をもらっているので、断ると受け取ったものを無視したように感じます
- 役割が固まっている:教わる側として話してきたので、「違うと思う」と言うのは立場をひっくり返す行為になります
- 好意が混ざっている:恋愛の可能性が前提にあるので、断ることが関係そのものの拒否に見えます
- 第三者の前で言われる:師匠や仲間が同席している場では、二人のときより格段に難しくなります
だから同席させる形が選ばれるのだと考えたほうが自然です。
「3人目が出てきたら行かない」を先に決めておくのが効きます。 現場で判断しようとすると、上の4つが全部かかってきます。行く前に決めておけば、その場で考えなくて済みます。
距離を取る言い方
角を立てずに終える言い方を置いておきます。
誘いを受けたとき
理由を詳しく説明しないのがコツです。説明すると、そこを論点にした返信が来ます。
「お話はありがたいのですが、そういった集まりには参加しないようにしています」
「ありがとうございます。ただ、お金が動く話には関わらないと決めているので、今回は遠慮します」
「決めている」という形にするのがポイントです。 検討の結果ではなく方針として伝えると、説得の入口がなくなります。
第三者に会わせたいと言われたとき
「今回は二人でお会いできればと思っています。他の方がいらっしゃるなら、またの機会にします」
これで引き下がらない相手なら、そこが判断材料になります。
すでに何度か話を聞いてしまっているとき
「いろいろ教えていただいてありがとうございました。考えたのですが、私にはこの話は合わないと感じています。申し訳ありません」
すでに日程を押さえてしまったとき
約束したあとでも、行かない選択はできます。当日に黙って行かないより、前もって一言送るほうが後が楽です。
「申し訳ありませんが、◯日のお約束はキャンセルさせてください。考えた結果、やはり参加は見送ります。直前のご連絡になってすみません」
理由を聞かれても、同じ文を繰り返すだけで構いません。約束したことは、行く義務にはなりません。
一度断ったら、同じことを短く繰り返すだけです。理由を足すほど話が続きます。
やりとりを終えるとき
勧誘に当たる行為は、アプリの規約で禁止されています。Pairsの場合、商用目的の宣伝・広告、無限連鎖講やマルチ商法への勧誘、特定の宗教や思想の啓発・勧誘が、恋愛以外の目的での利用として禁止されています。つまり、こちらが我慢して対応する必要のない行為です。
このとき、順番はブロックより通報が先です。ブロックすると過去のやりとりが見えなくなり、通報に必要な履歴を出せなくなることがあります。
Pairsの違反報告は、相手のプロフィールまたはメッセージ画面の右上から行えます。相手がすでに退会していても報告できます。公式ヘルプには「ビジネス、宣伝、勧誘」を目的とした使い方が報告対象として挙げられており、できるだけ詳しく書くことが推奨されています。
通報したことが相手に伝わらないかが心配な場合も、答えは公式に出ています。 Pairsのヘルプには「違反報告されたこと、および違反報告の内容を、お相手含め他の会員に伝えることはありません」と書かれています。
身の危険を感じる内容が届いた場合は、警察に相談してください。 Pairsの案内でも、警察に相談したうえで違反報告をするよう書かれています。警察相談専用電話は #9110、緊急時は110番です。
お金を払ってしまったあとにできること
すでに払ってしまった人のために書いておきます。終わった話だと思わないでください。
まず、年齢も経験も関係なく使えるものから
マルチ商法(連鎖販売取引)に当たる契約なら、特定商取引法第40条により、法律で決められた書面を受け取った日から20日以内であればクーリング・オフができます。訪問販売の8日より長く設定されています。
しかも、事業者が事実と違うことを言ったり威迫したりしたせいでクーリング・オフしなかった場合は、20日を過ぎていても可能だと消費者庁は説明しています。日数だけで諦める必要はありません。
消費者契約法のほうにも、要件に年齢や経験が入っていない規定があります。第4条第3項の第2号から第4号です。
- 帰りたいと言ったのに、その場所から帰らせてもらえなかった(第2号)
- 勧誘だと告げられないまま、自分では帰りにくい場所に連れて行かれて勧誘された(第3号)
- 家族や知人に相談するため連絡したいと言ったのに、威迫する言動を交えて妨げられた(第4号)
セミナー会場に連れて行かれた、「今決めて」と帰してもらえなかった、「周りには相談しないほうがいい」と止められた。 この型でよく起きることが、そのまま並んでいます。思い当たるなら、ここが本線です。
恋愛感情を使われた場合の規定もあります
消費者契約法の第4条第3項第6号は、次のような場合に契約を取り消せると定めています。条文の言い回しを読みやすく言い換えたものです。
消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、勧誘する人に恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ相手も同じ感情を抱いていると誤って信じている。それを知りながら、勧誘する人がそこにつけ込んで、「契約してくれないと関係が破綻する」と告げた
同じ第3項の第5号には、結婚などへの願望について「過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり」契約が必要だと告げる行為も挙げられています。
ただし、この2つには「社会生活上の経験が乏しいことから」という要件が付いています。年齢だけで機械的に決まるものではありませんが、30代が当然に使えるとは限りません。だから先に、要件のないほうを書きました。
いずれにしても、該当するかどうかを決めるのは本人ではありません。自分で判断して諦めないでください。
消費者契約法の取消権は、追認をすることができる時から1年、契約の締結時から5年を過ぎると時効で消滅します(同法第7条)。早いほうがいいということです。
恋愛コンサルのような継続的なサービスの契約については、クーリング・オフの条件を恋愛コンサルの高額契約|クーリング・オフできる場合と、相談先に整理しています。
相談先
消費者ホットライン 188(いやや)に電話すると、最寄りの消費生活センターにつながります。契約書、やりとりの画面、振込の記録を残したまま相談してください。
スクリーンショットは、ブロックや退会をする前に取っておいてください。
それでもアプリを使い続けるために
ここまで読んで「やっぱり怖い」と思ったとしても、使うのをやめる必要はないと思います。この型は入口が決まっているので、合図を知っていれば避けられます。
見るべきものは3つだけです。第三者が出てくるか。金額の話が出るか。アプリの外に出るのが早すぎないか。
アプリを選ぶときに見ておきたいのは、運営が何を危険として公開し、通報をどう扱っているかです。
Pairsは師匠・不労所得・情報商材といった具体的な言葉まで出して警戒サインを公開しています。違反報告は退会した相手についても行え、報告したことも内容も相手には伝わらないと明記されています。通報のハードルが低いかどうかは、この型に当たったときに効いてきます。
女性は無料で登録でき、趣味や価値観のコミュニティから相手を探せます。アプリ内に「コンサル」を名乗る人が多いと感じている場合はマッチングアプリにやたらコンサルが多くて怪しいんだけども参考になると思います。
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まとめ
この型は入り方で見分けられないかわりに、切り替わり方がはっきりしています。その場で判断しようとしないことが、いちばん効きます。断る理由を考える体力は、相手のほうが多く持っているからです。
すでに払ってしまった場合も、年齢や経験の要件がない救済ルートがあります。消費者ホットライン188に早めに相談してください。
📌 この記事のポイント
✅ 入り方では見分けられない。本当に親切な人と形が同じなので、見るのは切り替わりのほう
✅ Pairs公式が警戒サインに名指ししているのは「師匠・先輩・不労所得・将来の夢」をマッチング直後に出すこと
✅ いちばん強い合図は第三者の登場。「師匠に会わせたい」が出たら目的は二人の外にある
✅ 警察庁の令和7年確定値では、SNS型ロマンス詐欺の入口はマッチングアプリが32.7%で最多。詐称職業も投資家が最多だが627件=全体の11.1%で、多数派ではない
✅ 被害時の連絡ツールはLINEが93.8%。アプリの外に出るのが早すぎる相手は順番に注意
✅ 断るときは「決めている」と方針の形にする。理由を足すほど話が続く
✅ 終えるときはブロックより先に通報。履歴が見えなくなると報告できないことがある
✅ 払ってしまったら、まず年齢・経験の要件がないルートを見る。マルチ商法なら書面受領から20日(特商法40条)、帰らせてもらえなかった・相談を妨げられた場合は消費者契約法4条3項2〜4号
✅ 恋愛感情を使われた場合の規定(同6号)には「社会生活上の経験が乏しいこと」の要件がある。該当するかを決めるのは本人ではないので、消費者ホットライン188へ
※この記事は制度や統計の概要を紹介するもので、個別の契約について法的助言をするものではありません。自分のケースが対象になるかどうかは、消費生活センターや弁護士にご相談ください。統計は警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」、条文は消費者契約法(e-Gov法令検索)および消費者庁「特定商取引法ガイド」、アプリの仕様はPairs公式「悪質なユーザーを見分ける手がかり」「利用規約 第8条」およびヘルプセンターにもとづいています。いずれも2026年10月15日に確認した内容です。

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